約 818,100 件
https://w.atwiki.jp/masturbation/pages/49.html
あ
https://w.atwiki.jp/haruhioyaji/pages/80.html
母 お父さん、あと何か言いたいことはありますか? 親父 プロポーズのこと覚えてるか? 母 ええ、もちろん。 親父 俺と同じくらい長生きしてくれ、って言ったっけな。 母 こんなおばあちゃんになるまで生きられるなんて誰も思わなかったわ。お父さんのおかげよ。 親父 俺が死んでも、合わせなくていいぞ。2倍ぐらい長生きしてもいい。 母 一人でさびしくないんですか? 親父 娑婆がにぎやか過ぎた。さびしいってやつを思いだすのに時間が必要だ。 ハルヒ にぎやかさの半分は、親父のせいでしょ! 親父 あとの半分はおまえだ。なあ、キョン、おまえもそう思うだろ? キョン はい。 親父 あとは頼むぞ。といっても、こいつら勝手になんとかするからなあ。 キョン ええ。 親父 ああ。最後にかっこいいこと言って死のうと思ってたんだがな。 ハルヒ いいわよ、最後ぐらい。聞いてあげるわよ。 親父 いや、普段から言いすぎて、肝心なときにネタ切れだ。 ハルヒ あほ。 親父 キョン、おまえのでいいから、なんかくれ。 キョン すいません。追い詰められないと、出てこないんで。 親父 義理とはいえ、親父が死ぬんだから、もうちょっと追い詰められろよ。 キョン すいません。 親父 といっても、末期の言葉が『ポニーテール萌え』じゃあなあ。 キョン すいません。高一の時の言葉はさすがに勘弁してください。 ハルヒ カントの時世の言葉がいい、って前にいってたじゃないの? 親父 Es ist gut ! か? ありゃ日本語に訳したら、バカボンのパパだぞ。『これでいいのだ』 ハルヒ あんたは、もう、それにしときなさい! 親父 『あの世にも、粋な年増はいるかしら』じゃ噺家だしなあ。 母 さびしさをおもいだすんじゃなかったの? 親父 失策だ。死ぬまで悔やみそうだ。 ハルヒ いったい、いつ死ぬのよ? 親父 ほんとは話すのだって苦しいんだぞ。 ハルヒ 無理に話さなくていいのよ! そしたら周りで勝手に悲しむのに。 親父 ……お前の孫に生まれ変わってやる。 ハルヒ 呪いをかけてどうしようっての? 最後ぐらい、さわやかにいきなさい! 母 お父さん。 親父 ん?ああ。……おまえら、子に孫ども、ちょっと向こう向いてろ。 ハルヒ なによ? 親父 いいから。 「……」 振りかえると、ハルヒの母さんは、横たわった親父さんを抱きしめていた。さっきまで彼女の背中に回っていただろう親父さんの手が落ちてしまわぬように握っていた。 「母さん?」 「うん。いっちゃった」 そう言って、ハルヒの母さんは、目を閉じた親父さんに口付けすると、一人娘を抱きしめ、その背中をぽんぽんと軽く叩いた。 「さびしくなるわね」 ハルヒが泣き始める前に、俺は子供たちを連れて病室を出た。 「ねえ、パパ。ママとおばあちゃん、泣いてるの?」 子供の一人が尋ねる。 「そうだな」 「どうして?」別の一人が聞く。 「おじいちゃんが死んだ、もう会えないんだ。なんか泣きなくならないか?」 「なる」「ぼくも」「あたしも」 「こういう時は泣いたっていいんだ」 「パパは泣かないの?」 「泣いてるさ。泣き方が違うだけだ」 「どうして?」 「おじいちゃんに頼まれたからな。後を頼むって」 「ねえ、パパ.おじいちゃん、最後になんて言ったの?」 「ん?」 「向こうむいてろ、の後、おばあちゃんに何か言ってたよ」 「その後、おばあちゃんの声もした」 「聞こえたか?」 「うん。でもわかんなかった」「ぼくも」 「そうか。でも覚えとこうな。分かる日が来たら、その日はきっと大切な日になるから」 親父 I LOVE YOU. 母 I KNOW.
https://w.atwiki.jp/haruhioyaji/pages/365.html
「あ、キョンか? 親父だ。しくじっちまった。ああ、俺の方はピンピンしてるが、バカが一人、足首をひねってな。おれの見立てじゃ骨まではいってない。今夜は腫れるだろうが、周りは雪だらけで冷やすものには事欠かん。今か? スキー板ででっかい雪胴を掘った。その中にいる。雪は断熱性も遮音性も抜群だからな、中は静かなもんだ。天井もちゃんと滑らかにしたし、壁の下には溝を掘ったから、溶けた雪が垂れて来て悩まされる心配もない。で、用件だ。ついさっき、母さんの携帯にGPSのデータを送った。だが、おれのカンだと、2、3日、低気圧が居座りそうだ。となると、母さんの能力は半減だ。すまんがサポートしてやってくれ。バカと話すか?」 「早く貸しなさい! ……キョン? 親父が大げさなこと言ってたけど、あたしは全然平気だから、あんたはつまんない心配はしないように。この通り、ピンピンしてるわ。この歳で親父とビバークするとは思わなかったけどね」 「何歳まで、いっしょに風呂に入ってたか、キョンに話そうか?」 「うっさい。殺すわよ! ああ、こっちの話。で、むしろ母さんが参ってると思うから、うん、お願い。雪がやみさえすれば、親父に橇引かせて、速攻で帰るわ。食べ物? ああ、それなら、どこかの意地汚い親父が、チョコレートとかカロリーメイトでポケットをパンパンにしてるから、3日は持つわね。 あー、うるさい! おやすみのキスだあ!? そんなもん、するわけないでしょ! あ、こら!」 「実は電池がヤバイ。まあ、こっちはこんな感じでなんとかやってるから、心配するなと母さんに伝えてくれ。それじゃな」 「キョン君、お父さんから電話あった?」 「ええ。すみません。おればっかり喋ってしまって」 「いいえ。二人のことだから一方的に喋って切っちゃったでしょ?」 「あ、はい」 そのとおりです。 「何か言ってた?」 「ええ。ハルヒが足首をひねって動けないんで、親父さんが雪胴つくってビバークしてる。食料はチョコレートとかカロリーメイトを親父さんがたくさん持ってたから3日は持つだろうって」 「ああ見えて、石橋を叩くタイプなの。スキー場とはいえ、雪山は雪山だしね。お父さんのメールで二人の位置は分かったし、緊急の危険がないのも確かそうね。捜索隊は待ってもらいましょうか。ただ、この吹雪がねえ……」 「親父さんは低気圧が居座りそうだと言ってました」 「うーん、少しだけど雪の止み間がありそうなんだけど……さて、どうしようか?」 「それ、いつですか?」 「明け方、時間は1時間ぐらいかしら。その距離を行って帰ってくるには、スノーモービルに、あと橇も必要ね。橇の方は、なければ、そうね、これを借りて行きましょう」 「って、毛布ですか?」 「ええ。雪を溶かして毛布を濡らして、零下20度の外気に晒せば、毛布に染み込んだ水分が凍って、即席の橇になるという訳。完全に凍るまでに形は好きにできるわ。もちろん本当の橇の方が乗り心地はいいけれど」 「すごい」 「こういう裏技はお父さんの十八番だもの」 「って、ことは、実際に?」 「ええ。雪面を滑り降りて悪者から逃げただけだけど。わたしたち、少しはロマンティックな冒険もしてるのよ」 いや、絶対に少しじゃないような気がするが。 「……おやじ」 「なんだ、娘?」 「その……ごめん」 「何をだ?」 「その……迷惑、かけて」 「……子供がやることで大人の迷惑にならないようなことがあるのか? 迷惑かけられるのは親の特権だ。おれはまだ、誰にも譲る気はないぞ」 「……ごめん」 「そういうのは、助かったときに言え」 「ええっ、助かんないの?」 「違う。助けに来た奴に言え、ってことだ。こういうのは、遭難したものより、救助に来るほうがつらい。自分の努力が、目指す結果に結びつくのか、最後までわからんからな。正直、この程度なら遭難と言わん。2、3日待てれば、確実に助かる。そしてそれくらいの用意はいつもしてある。問題は助けに来る方だ」 「母さんなら、下手なことしないと思うけど、……じゃあキョン!?」 「こんな時には、誰かさんよりは、よほど信用できるはずなんだが……どういう訳か、いいカードが出ない」 「って、なんなのよ、そのトランプは?」 「娯楽だ。被災した人間にとって、かなり重要なのに支援する側が思いつきにくいもののひとつだ。助けたがり屋は、相手に必要以上のストイックさを求めがちだ。おなじケチでバカで愚かな人間なんだがな。おれたちは、お互い、絵に描いたような負けず嫌いだ。勝負ごとなら、眠る心配はあるまい?」 「あんた、あたしに勝てるとでも思ってんの!?」 「これだ。あんまり想像通りでいやになるな」 「借りられたんですか?」 「ええ。スノーモービルも、橇も。こういう頼みごとで断られたことがないの。不思議ね」 いや、おれには全然不思議に思えませんが。 「明け方まで、まだ時間があるわ。あの人たちは眠れないけど、わたしたちは眠っておきましょう」 「ええ、あ、はい」 「眠れなくても、眼を閉じて横になるだけでも違うわ。5分間の睡眠不足が判断ミスにつながると言ったら、少しは眠ろうって気持ちになれる?」 「大丈夫です」 「眠るのも救助のうち、ね。じゃあ、おやすみなさい。雲が切れたら、部屋に起こしに行きます」 「お願いします」 「親父……起きてる?」 「寝たら死ぬ。吹雪の中程じゃないが、壁で断熱されてるとはいえ、雪洞の中も冷蔵庫の中くらいの気温しかないぞ」 「そういう意味じゃなくて!」 「何が聞きたい?」 「いつも、こんな用意してるの?」 「おれは本来、おまえや母さんと違ってアドリブがきかんタイプだ。場数はある程度積んでるが、限界も知ってる。事前にできる限りのことはしないことには落ち着かん。それだけだ。……かといってツェルト(ビバーク用の簡易テント)を担いでゲレンデに出るほど場違いなことはしない。雪洞の掘り方なら、頭の中に入って荷物にならんだろ」 「非常食は?」 「仕事柄、地方や海外への移動が多いし、腹が減るのがキライなんだ。だから持てるだけのものはいつも持つことにしてる。それが習い性になってるだけだ。……で?」 「母さんならともかく、あたしはアドリブなんて得意じゃないわよ」 「おまえ単体で、とは言っとらん。あいつがいるだろ」 「……」 「なんだ、図星か。つまらん」 「な、なにがよ!?」 「ここにいるのがおれじゃなくて、あいつでも同じようにしただろう。まあ、おまえはわめくだろうし、キョンの奴も言い返すし、ワーワーギャーギャーだろうが、幸いにして周りは雪だらけだ。いくら叫んでも、音は吸収される」 「……」 「雪胴くらい、雑用係が本気になればいくらでも掘れる。そしてあいつは本気になる。多少、出来がいい加減でも、風雪が避けられればいいんだ。ちゃんとした掘り方は、ロッジにもどってシャワー浴びてたらふく食ったら、いくらでも実地で教えてやる」 「あ、あたしは……」 「迷惑かどうか、足手まといかどうかは、あいつに聞け。おれなら答えは容易に想像がつくがな。……入り口を見てくる」 「キョン君」 「あ、はい。起きます。風と雪、止みましたね」 「ええ。眠ってないの?」 「うとうとはしたんですが、なんか音がしない気がして。それで今、起きたんです」 「わたしが起こさなくてもよかったみたいね。でも、あいにく1時間持ちそうにないの」 「行きましょう!」 「そういうと思ったわ。ただし、途中で雪になったら、ためらわず引き返します。それでいい?」 「はい!」 「バカ娘、吹雪がやんだぞ」 「え?」 「どれだけもつか分からんが……。やれやれ、あいつは来るだろうな」 「ええ!?」 「さめてるくせに、妙なとこ熱血で、おまけにバカだもんな。ああ、キョンのことだぞ」 「わかってるわよ!」 「母さんがいるから、スノーモービルや必要なものを準備してるだろう。だが、母さんだけなら、多分今回は見送る。この場合、最悪のケースは、母さん達が俺達を拾って引き返す途中、吹雪が舞い戻ってくることだ」 「ちょっと待って。なんで母さんはキョンを止めないのよ?」 「わからんか? 母さんは、そういうバカが好きなんだ」 「じゃあ、キョン君はわたしの後に乗って」 「あ、はい。そりは荷物でいっぱいですね」 「食料と燃料ね。あと、スノーソー(固い雪を切る道具)にスコップ。お父さんが雪胴を広めにつくってくれればいいけど、作りなおしもかくごしてね、キョン君」 「え?……ってことは?」 「今日の山の天気は嫉妬深いみたい。多分、ロッジに帰ってくるのは難しいわ。帰りに吹雪に遭うのが最悪のパターン。かかってるのは家族の命だもの、だれも危険な目に合わせたくないでしょ?」 「お母さん……」 「それでも行くのはわたしのわがまま。『助けに来た』と言えないのはカッコ良くないけど、やっぱり一緒にいたい。そう思うのはおかしなことじゃないわ」 「おかあさん……すみません」 「ふふ。あとで一緒にハルに叱られましょ」 「というわけで、バカ娘。おれは、雪が降るまで、外につったってる。感度3だったからGPS誤差が数メートル以内だろうが、こうまで雪ばっかりだとな。まあ、母さんなら、それでも見つけちまうだろうが、目印はあったほうがいい」 「雪が降ったら?」 「今日中にキョンに会うのはあきらめろ。母さんも引き返すはずだ」 「わ、わかったわ」 「不安なら歌でも歌ってろ。雪胴を崩さん程度にな」 「音は全部、雪が吸いこんじゃうわよ」 「だからだ。何を言っても歌っても、おれには聞こえん。サービス、いいだろ?」 「もう、さっさと行きなさい!」 「速い!もう、こんなとこまで」 「喋って舌かまないでね。でも、一度止まりましょう。……地図の上で位置が分かっても、こう積もっていては、少し大変ね。キョン君、ちょっと叫んでくれる?」 「あ、はい。……ハルヒー!!」 「みごとに吸収されちゃうわね。時計回りにすこしずつずらしながら、叫んで」 「はい。ハルヒーー」 「くそ。風が出て来やがった。タイムリミットか?」 「親父!」 「バカが、内に入ってろ」 「いま、かすかだけど、キョンの声が」 「親父イヤーは地獄耳なんだけどなあ。愛のテレパシーか、それとも……声が風に乗ったか? 風上なら、面倒だが手はある。……やれやれ、落ちはやっぱりハルキョンか」 「なんでスキーウェアの中から、ロケット花火が出てくんのよ!?」 「親父のとっておきだ。ゲレンデでイチャラブなカップルを見つけたら、打ちこんでやろうと思ってな」 「子供か!?」 「導火線は蝋でコーティングしてあるから使えるはずだ。風上に打ちこむぞ」 「!いま、へんな音、しませんでしたか?」 「ええ。ロケット花火ね。こんなところだし、間違いないわ。風下に移動します。タイム・リミットは5分ぐらいよ」 「はい。親父さーん!!花火、聞こえましたあ!!」 「ああ。おれにもバカの声が聞こえた。こっちも叫んどくか。バカ娘、中に入っていろ。……かあさん、すきだああ!!」 「わたしもよー」 「どうした?バカ娘?」 「ううん、いい。ちょっと気分的に頭が痛いだけ」 「といってる間に来るぞ。ああ、雪も降ってきやがった。やっぱり、ぎりぎりだったな」 「おとーさーん、ハルー。おなか、すいたでしょー」 「安心したけど、気が抜けたわ」 「抜いとけ。とりあえず暖かいものにありつけそうだ」 ハルヒのお母さんが持ってきた荷物には、毛布で包まれた大型の真空魔法瓶が3つあり、中身はおぜんざい、粕汁(かすじる)、そしてキムチ鍋だった。 「ハル、選んで。どれにする?」 「……おぜんざい」 「じゃあ、おもち焼かなきゃ」 「これから?」 「大丈夫、小さい子だけどコンロも、焼き網も持ってきてるから」 ああ、この人はきっと、南極ですら完璧なお茶会を催してしまうんだろう。 予備のバッテリーで生き返った携帯電話で、ロッジとは連絡を取り、無事に合流できたこと、吹雪がおさまるまでビバークすることを伝えた。 お母さんは、そりの荷物の中にツェルト(ビバーク用の簡易テント)を2組積んできていて、真っ先に親父さんとおれに簡易トイレを2つ(男子用と女子用)設営させた。 あとの憂いを取り払われたおれたちは、大いに食事を楽しみ、食後にいれたてのミルクティとカードゲームまで楽しんだ。 3日間の雪胴生活は、事によると、ロッジのそれよりも快適なものであり(主に食事面、ということだが)、冬の空がきれいに晴れ上がった頃には、どれだけ食べても太らない二人を除いて、3キロは太っていたというほどだった。 「キョン、体がなまったろ? バカ娘はどうせしばらくロッジの部屋でさびしく養生だ。ナンパに行こうぜ」 「なまった体とナンパに、どんな関係があんのよ!」 「ゲレンデじゃ眩し過ぎて、そういうアダルトな質問には答えられんな」 「な!」 「まあ、バカ娘にも同情の余地はある。キョン、ナンパのかわりといっちゃなんだが、雪洞の掘り方を一から教えてやる。来い」 そして、おれは雪山の別の恐ろしさを、とくと味わうことになるのだが。それは、また、別の話……。
https://w.atwiki.jp/haruhioyaji/pages/12.html
「なによ。ずいぶんとご機嫌ね?」 カーペットに寝転んでTVを見てるのは親父。いい大人が日曜の朝からアニメ見ておもしろい? 「そうとも。気分がいい。だが、お前には負けそうだ」 「どういう意味かしら?」 「年頃の娘の幸せそうな姿を見るのは親冥利に尽きるが,男親としては寂しさに悲しさが添加されるようだ」 「な・に・が・言いたいのかしら?」 「ハル、お父さんと遊んでいいの? 思ったより時間過ぎてるわよ」 と助け舟を出したのは母さん。どっちにとっての助け舟かしらね。 「ええ、うそ。やばい。じゃ、行ってくるね」 「まて娘。行きがけの駄賃だ」 そういってバカ親父が何か放ってくる。と、と、と、キャッチ。え、あたしの携帯? 夕べ、居間でテレビみながらメールして、そのままだったんだ。 「心配するな。何も見てない。それから充電なら、しといた」 何も聞いてないでしょ! ……見てたら殺すけどね。 「楽しんでこい。だが、孫はまだいらんぞ」 「母さん、グーで殴っといて。いってきます!!」 「はいはい、いってらっしゃい」 ああ、もう! だから親父が家にいると、調子狂うのよ! 今日だって、ほんとだったらキョンに迎えに来させるはずだったのに。キョンの奴、「俺はかまわんぞ」って言ってたけど、あたしがかまうの! あんなセクハラ親父、見せられないわよ。こんなあたしを見せたくない、ってのもあるけど。 「いっちまったか」 「お父さん、さみしそうなのに、何だかうれしそうですね」 「何故だか当てたら、母さん、デートしよう」 「そうですね。とてもいいお天気で、お洗濯日和だこと」 「わかった、ヒントを出そう。これ、なーんだ?」 「お父さんの携帯でしょ。……あなた、まさか? またハルに怒られますよ」 「俺の娘のくせして、機械に弱いからな、あいつ」 「機械に弱いというより、せっかちなんですよ、お父さんに似て」 「『携帯なんて電話とメールができれば十分よ!』って、どこの親父かと思うよ」 「で、何したんですか?」 「あいつはマニュアルなんて絶対読まないからな。自分の携帯の機能も知らないんだ。母さん、最近の携帯にはGPS機能というのがあってな」 「はあ。なんだか、わかっちゃいましたよ」 「さすがだな、母さん。デートしよう」 「はいはい。でもハルの邪魔しちゃ駄目ですよ」 「それぐらいの慎みはある。だが歯止めが効かない恐れもある。だから、母さん」 「デートというか、お守りじゃありませんか。……すこし支度に時間がかかりますよ」 最悪よ、最悪。 集合場所(じゃなくて今日は待ち合わせ場所よね)には約束の10分前に着いたわ。予定では30分前につきたかったとこだけど。 物陰から恐る恐る覗くと、キョンの奴はまだそこにはいなかった。そこにはね。 「なにしてるんだ、ハルヒ」 「!」 いきなり背後から声かけないでよね! 「あたしがどっかのスナイパーなら、撃ち殺してるところよ……」 じとっとした目でにらんでやる。 「おれも今来たところだ。どっちにしろ、今日は俺のおごりだから、安心しろ」 缶コーヒーを二つ持って後ろから登場したキョンは、はあ、とため息をつく。でも、不機嫌というわけじゃないわね。まあ、これはもう癖みたいなものね。多分。 「あんたの情けは受けないわ」 キョンの奴は一瞬あ然として、それから吹き出した。 「な、なんで笑うのよ!」 「いや、すまん。というか、おれはおまえに情けをかけた覚えは一度だってないぞ。まあ、かけられた覚えもないが」 まだ笑ってるし。何がそんなにおかしいのかしら。 「し、知ってるわよ、そんなこと」 少しくらいは、優しくしてくれてもいい、と思う時もなくはないけどね。まあ、いつだって、ある意味「やさしい」のだけれど。特殊すぎて、時々腹が立つわね。 「出掛けに何かあったか?親とやらかしたとか?」 それに、普段は極端に鈍いくせに、時々ムダに鋭い。わざとやってるんじゃないかしら。 「親父と、ちょっとね」 「ケンカか?」 「ケンカというか、いたぶられた、わね」 なに、その「お前がか?」みたいな顔は。むかつくわね。 「まあ、おまえの親だもんな」 「どういう意味?」 あたしじゃなけりゃ、頬をはられて一発で退場ものよ。 「別に。まあ、強いて言えば、俺にも据えられる腹がなくはない、ってことだ」 「意味分かんない。ああ、言わなくいい!」 あたしは、このバカの手を引いて歩き出す。この場で、これ以上の言葉は不要だわ。 「用意できたか。じゃ、出発!」 「ハルとは2時間遅れですけど」 「小娘には、それくらいのハンディはやらんとな。俺も鬼じゃない」 「……これで、結構仕事ができるっていうんだから、不思議ね」 「うん。多分世の中には2種類の人間が要るんだな。一つは壊す人間、もう一つは修復する人間。壊す人間がいるから新しいことが起こるし、直す人間がいるから毎日が続いていく。俺やハルヒは壊す方だし、おまえや、えーと……」 「キョン君」 「そうそう、そのキョン君は、直す方の人間だな」 「苦労しそうですね」 「俺は仲良くなれそうな気がする」 「不憫になってきますよ、キョン君が」 「なあ、おまえの家って、普通か?」 「はあ?なに?」 「ああ、NGワードだったか。いや、ただ家族仲とか、どうだと思ってな」 「それを知って、あんたはどうしてくれる訳?」 「ふう。確かにできることしかできないけどな。手順を踏めば、もう少しできるかもしれん」 「どういう意味?」 「いや、とにかく、雑用係にも、愚痴ぐらいは聞けるって話だ。おまえが話したいこと限定でな」 「いまは雑用係に用はないわ」 「そうか。じゃ、暫定彼氏志望者じゃどうだ?」 「・・・」 「……黙るなよ。情けないが、これでも、なけなしの勇気なんだ」 「出直してきなさい。あと『志望者』ってのは、外してきて」 「へ?」 「あー、もう、うっさい。あんたが変だから調子狂うわ。どうしちゃったのよ、今日は?」 「知らん。……父親って聞いたらかな?」 「言っとくけどね!」 「……おう」 「あたしは親父似だからね!」 こ、こらキョン、なんでそこで笑うのよ!バカにしてんの!? 「おまえはキョン君に何度か会ってるんだろ?」 「ええ。よくハルを送って来てくれますし、遊びに来たことも何回か」 「拗ねてるように聞こえるかもしれんが、初耳だ」 「ええ、はじめて言いましたよ。拗ねてるんですか?」 「正直言うと拗ねてる」 「私は感謝してますよ」 「俺だって感謝してるよ。娘と軽口を言い合える日が来るなんてな。うれしくて頬刷りしたくなる」 「愛情表現が相変わらず下手ですね」 「いまのは冗談だぞ、母さん」 「私のも冗談ですよ」 「ハルヒの中学時代を思うとな」 「あら、『俺はハルヒを信じる。信じて待とうと思う』と言ってたじゃありませんか」 「父に二言はない。が、つらくなかったと言えば嘘になる」 「ハルヒ似のお父さんが、よく切れずに我慢しましたね」 「それ、ほめてくれてるんだろうが、ハルヒが俺に似てるんだ」 「どっちもどっちですよ」 「いや、時間の順序とか、遺伝とか、そういうのがあるだろう」 「冗談ですよ」 「で、母さん。映画と買い物と、どっちがいい?」 「映画見てから買い物するか、買い物してから映画を見るか、ですね」 「買い物はいいが、あまり荷物になると、映画も見にくいし、第一フットワークが悪くなる」 「あら、その後、追いかけっこでも?」 「娘と彼氏を追い回す、いかれた親父か。悪くないな」 「一生、口を聞いてもらえなくなりますよ」 「まあ、荷物なんか預けてもいいし、送らせてもいいか」 「とりあえず映画見てから、買い物で時間をつぶしましょうか」 「で、キョン君って、どんな奴なんだ?」 「そうですねえ。一言では言えないけれど、やさしい子ね」 「最近の男はみんなやさしいぞ。中には例外もなくはないが」 「ハルがどんなわがまま言っても、照れ隠しに怒っても、許してくれる。でも、ハルのためにならないと思ったら、嫌われようが苦言するし本気で怒ってくれる」 「ほんとはその役をやりたかったんだ」 「お父さんは何をやっても、真剣に怒っているときも、どこか楽しげですもの」 「そうでもない。特に娘に『楽しんでる』『好きでやってる』といわれのない非難を受けることほど悲しいものはないぞ」 「ハルはお父さんにはそうあって欲しいのよ。でも私はハルがちゃんと涙を流せる女の子に育ってうれしいわ」 「……」 「どうかしました?」 「いや、黙ったら少しは悲しげに見えるかなと思って」 「自分で解説が必要なら、まだまだですね」 「キョン君に聞いといてくれ。ハルヒの叱り方」 「『親のプライドが微塵もない』ってハルの声が飛びそうですねえ」 「あいつときたら、父親をグーでなぐるんだぞ。俺のお仕置きビンタはスウェイでかわすくせに」 「そんなの教えたの、お父さんじゃありませんか」 「父親のこめかみにハイキックするんだぞ。父親に関節技つかう娘が他にどこにいる?」 「それでも少しも効いてない振りして笑っているからですよ。あ、でもハイキックはキョン君に叱られたみたい。『スカートの中とかいろいろ見えるだろ』って」 「……」 「なんですか、そのOh, my god!! みたいな身振りは?」 「感情表現が下手なんだ」 「『別に減るもんじゃないでしょ!』ってハルが言い返したら、『減るんだよ。俺のHPとかLPとか、なんかそんなのが』とキョン君が」 「そんな話したのか?」 「ええ、ハルが声帯模写付きで話してくれたのよ。『自分のものでもないのに何言ってんのよ!』とか、ぶつくさ言ってたわね。あら、私の声真似もなかなかいけてた?」 「ハルヒが母さんにいじめられている映像が、何故だか頭に浮かぶんだが」 「ええ。ハルが照れ隠しに不機嫌ぶるのがかわいくて、ついついからかちゃうんだけど」 「今度そういうことがあったら、喜びは二人で分かち合おう。写メで送ってくれ」 「そんなに変なのか、ハルヒの親父さん」 今日は日曜、俺的には近頃すっかり定番となった市内、もとい「市街探索」だ。参加者は、土曜に定例で行われる市内探索と違って、団長と団員その一。今、二人は移動中、電車の中で隣り合って立っている。 前の日の探索の終わった後か、その夜の電話などで、日曜の集合時間とだいたいの行き先が決まる。目的は「市内探索」と大同小異、つまりあってないようなものだが、参加者によってはいくらかの意見の相違はあるかもしれない。あっても別にかまわん。他人と付き合うのは、いやそういう意味じゃないぞ、異なる意見の持ち主と共にいること、なんだろう。多分な。 「変ってもんじゃないわ。あれはヘンタイの域に達しているわね」 「さっき、ハルヒは親父さん似だ、と聞いたような気がしたんだが」 「何か言った!?」 「いや、続けてくれ」 「娘を叱る時まで、おもしろ半分なのよ。一応、顔は怒ってる訳。でも、目がいかにも 『怒り顔、演じてます』って感じにニヤケてるの」 「気のせいじゃないのか?」 「ないわよ。叱り終わったら、さっさと隣の部屋へ行ったの。で、こっそり後付けてみたら、突っ伏して、文字通りお腹を抱えてるのよ!『すまん、母さん。限界だ』だって。母さんもその時ばかりは離婚を考えたって。あたしもそれで一時、人間不信に陥ったわよ」 突っ込んでいいのか、笑っていいのか、わからんぞ、ハルヒ。 「ある時、また親父のひどい悪ふざけで、何だったかは忘れちゃったけど、すごく頭にきて、親父のこめかみにハイキックをあびせたの。ああ、昔の話だし、あんたに会う前だし、部屋着に着替えてたし、スカートじゃなかったんだから、ノーカウントよ。……話もどすわ。とにかく親父の側頭部を蹴ったの。クリーンヒットだったわね。で、親父どうしたと思う? 屁でもないって顔でせせら笑ってるのよ。レバ—打ち→ガゼル・パンチ→デンプシー・ロールでとどめ刺そうとしたら母さんに止められたけど。ったく、思い出すだけで腹立つわ」 「子どもみたいだな」 おまえみたいだ、とは言わなかった。いかに俺でもそれくらいの空気は読める。というか、そう言った際の「不幸な俺」の映像を思い浮かべることはできる。 「そうよ、ガキなのよ、ガキ!」 「しかし父親と殴り合ってる中高生は、ざらにはいないと思うぞ。男女問わず」 「誰と誰が殴り合ってるのよ!? 向こうがこっちに一方にやられてるんでしょ。直ちに修正しなさい!」 「いや、ハルヒのケリを頭にくらって立っていられること自体、想像しにくいんだが。お前の親父はレスラーか何かか? 首まわりがお前のウエストより太いとか?」 「フツーのサラリーマンだと言い張ってるけどね。ああ、でも『相手の攻撃をよけてもいい格闘家がうらやましい。どんな技でも一度は受けるのがプロレスラーだ』とか、ふざけた台詞を吐いてたことはあったわ」 「ハルヒ、それに似たようなセリフ、俺もマンガで読んだことあるぞ」 「ああ、そうなの。それ知ってたら、その時突っ込んでやったのに」 やれやれ。なんだかハルヒの無駄な攻撃能力の育成環境を垣間見た気がする。 「お父さん」 「なんだ、母さん?」 「ロードショーじゃなくて名画座、というのはいいんですけど」 「すまんな。実は古い映画が好きなんだ」 「それは知ってますけど、この3本立て」 「ルトガー・ハウアー特集。『ブレードランナー』(1982年)、『ヒッチャー』(1986年)、『聖なる酔っぱらいの伝説』(1988年)。うむ、確かに右肩下がりだな。いい役者なんだが、この後、いい映画と役にめぐまれなかった」 「それはいいんですけど」 「あとサム・ペキンパーの『バイオレント・サタデー』(1983年)とリチャード・ドナー 『レディ・ホーク』(1985年)があれば完璧だったんだが」 「お父さんの見た映画は大抵見るようにしてるんですけど」 「それは、なにげにすごいな」 「『ヒッチャー』って、デートで見に来るような映画だったかしら?」 「ご立腹はごもっとも。しかし、いささか都合があってな。これ」 「携帯?」 「実は今さっき、ハルヒの携帯に特殊なメールを送った」 「大丈夫なんですか?」 「問題ない。このGPS機能のおまけだ。そのメールを送ると、ハルヒの携帯から、現在いる位置情報を知らせる返信メールが俺の携帯に来る。すると、地図の上にハルヒの現在位置が表示されるというシステムだ」 「いくら熱々カップルでも、メールが入ったら気付くんじゃないかしら?」 「恋する乙女の手を煩わすまでもない。今朝、ハルヒの携帯をいじって、『GPSメールを自動返信』モードにしといた。もともと迷子や徘徊老人の位置把握に使う機能なんだ」 「おもしろがって、その説明をハルにしないでくださいね。種明かしとか言って」 「駄目か?」 「そんな肉を川に落とした犬のような目で見ても駄目です」 「あいつの怒った顔を見るのが、唯一の生き甲斐なんだ」 「寂しい老後ね。いずれは出て行く娘ですよ」 「キョン君に婿に来てもらえばいい。あいつは話せる奴だ、多分」 「まあ、会ったこともないのに」 「もうすぐ会えるさ。だが今はまずい」 「どうしてです?」 「演出上の都合だ。さっきチェックしたところ、あいつらも映画を見るらしい」 「ロードショーを、ですか?」 「そう。だからあの界隈をうろうろしたくない」 「お父さん、嘘と尾行は下手ですものね」 「そうなんだ。よくサラリーマン社会でやっていけると思う」 「では、こうしましょう。交換よ」 「携帯をか。で、どうする?」 「お父さんはルトガー・ハウアーをご覧になって。私は買い物と尾行を楽しみます」 「母さん、今日はデエトだぞ」 「発音を気取っても駄目よ。デートなら、嘘でも私とルトガー・ハウアーを見る必然性を力説しなきゃ」 「ダシに使ったみたいで悪かった。素直じゃないんだ。ツンデレなんだ」 「本当にルトガー・ハウアーが見たかったのね」 「そっちじゃない。いや、完敗だ。最初から勝てる気がしない」 「では集合時間を決めましょ」 「12時半に○○屋(本屋)の哲学・思想書コーナーでどうだ? 誰も近づかん。その時間でもすいてるぞ。なんなら合言葉も決めようか」 「じゃあ、私が『ハルヒ』といったら、あなたは『キョン』ね」 「逆にしないか? 父親の男心も察してくれ」 「いいけれど、ダメージという点では同じじゃないかしら」 「本当だ。ハートブレイクだ、母さん」 「はいはい。じゃあ、また後でね」 「映画、よく見るのか?」 キョンが尋ねる。映画館でする質問じゃないわね。間抜けっぽい。キョンらしいといえば、キョンらしいけど。 「そうでもないわ。親父は家にいると絶えず何か見てるけど。多分、その反動ね」 キョンはいつものように少し困った風に笑う。あたしの方がもっと自然に笑ってるわね。それは多分、こいつの前だから。以前は少し悔しい気がしたけど、今は認めてあげるのもやぶさかじゃない。というくらいには、寛大になれた気がする。「寛大」というには、ほんとは程遠いけどね。はあ、自分につっこむ癖がついた気がするわ。誰のせいかしらね。 「で、今日の映画、おもしろいんでしょうね?」 「正直よくわからん。ふつうの映画とごくふつうの映画とへんな映画とすごくへんな映画があったんだが」 「なによそれ?」 「今、この辺りでやってる映画だ。あとは、怖い映画とすごく怖い映画だったな」 「すごく怖い映画がよかったわね」と言ってやると、キョンの顔に少しだけど焦りの色が見える。そこはポーカーフェイスで華麗にスルーでしょ。いつもみたいにやる気なさそうな顔でいいのよ。あたしはニヤリと笑ってやる。 「まあ、ヒロインが白血病で死ぬとかでない限り、暴れ出さないわよ」 声には出さないけど、やれやれ、って言ってる顔ね。 「まあ、『暴れる』と口で言ってるうちは大丈夫か」 うっさいわよ、キョン。 「ハルヒ」 「キョン。……母さんの言うとおりだった」 「何がです?」 「映画だ。『ヒッチャー』。確かにデエトで見る映画じゃない」 「そうですよ」 「ごついおっさんが、若い者を延々と追いかけ続けるんだ。自己嫌悪だ」 「あらあら」 「殺しても死なないんだよ、そのおっさん」 「ルトガー・ハウアーですから」 「それでさらに、若い者を延々と追いかけ続けるんだ。自己嫌悪だ」 「お昼、どうします?」 「携帯、とりかえてくれ」 「はい」 「ピ。ピ。ピ。……おいおい」 「どうしました?」 「あいつらだ。高校生らしく、ファストフードで済ませると思ったんだがな」 「この地図、小さいわ。どの辺りにいるのかしら」 「ここだ。こじゃれたイタメシ屋なんかあるところだ」 「よくそんな細かいところまでわかりますね」 「この辺りのメシ屋、ゲーセンの類いはすべて暗記した。基本だ」 「少年課の刑事さんみたいね。娘に似て、無駄に高いスペックね」 「娘が俺に似たんだ。……無駄に高いか?」 「キョン君が奮発したんですよ、きっと」 「イタメシ屋か? ランチだと1500円からある」 「そこまで覚えてるの?」 「基本だ……無駄に高いかな?」 「ええ、きっと。でも、嫌いじゃありませんよ」 「よかった。凹むところだった」 「で、鉢合わせはまだ避けたいの?」 「劇的な登場と行きたいもんだ」 「すてきな昼食と、わたしたちもいきたいわ」 「ガキが来そうにないそば屋があるんだが。そのイタ飯屋からすると駅を挟んで反対側だ」 「落ち着いて食べられそうね。天ざるなんて、どうかしら?」 「人におごりたくなるほど、うまいのが食える」 「すてきね。ごちそうになるわ」 「イエス、マム」 映画は可もなく不可もなく、といった感じだった。 泣かせどころが2〜3カ所、笑いどころが5〜6カ所。まあ,普通に「へんな映画」だったわ。 それも、前半はハラハラドキドキ手に汗にぎって見てたのに、後半はグーグーいびきかいて寝てる奴ほどではなかったわね。呆れるのを通り越して、笑えたわよ。 言い訳がまた古典的というかベタというか、「明日が楽しみで、夕べ寝られなかった」と。あんた、何時代の人間よ? 思いついても普通口に出来ないわよ。事実なら、なおさらね。 まあ、あたしも終わり三分の一は寝てたし、この件はこれ以上追求しないわ。あんたも忘れなさい。いいわね、キョン? いいのよ。こういうのは何を見るかより、誰と見るかが,重要なのよ。自爆?どこの誰が? へえ、あんたも言うようになったわね。でも、顔真っ赤にしてちゃ説得力は1ピコグラムもないわよ。うっさい。トマトとか言うな。指をさすな。小学生か?! ……ああ、待って。以後、恥ずかしいこと言う度に一回、グーで殴るから。はい、どうぞ。 ……ヘタレ。いくじなし。 まあ、食事は、おいしかったわね。 「ほんと、食べてる時は幸せそうだよな」 わるい? おいしいもの食べて幸せになるのは当然よ! 何食べても見境なく笑ってたら多幸症だけどね。あんたも、あんなにおいしいお弁当、持ってきてるんだから、笑顔で幸せを噛みしめて食べなさい。あれは、いつ取られるかわからんから、周囲を警戒してる表情だ? 上等よ、表へ出なさい! あ、そ。確かに混んでるしね。随分、並んでるわね。で、この後どうするの? はあ、誘ったの、あんたでしょ。しょうがないわね。ほら。何かって? 見てわかんない? 怪しげな収蔵品を展示してる博物館というか室内テーマパークの割引券。新聞屋が置いて行ったのよ。うっさい。行くの?行かないの? あたし?行くに決まってるでしょ。じゃあ、早く来なさい! 「で、どこで劇的な登場をするんです?」 「俺の計算だと、黄昏どきの展望台だな。みんな景色を見るふりをして、お互いを見ないお約束だから、若いアベックの宝庫だぞ」 「そこに乗り込むの?」 「命知らずだろ? 惚れたか?」 「あの二人、照れ屋だから、いっそ観覧車にするかもね」 「だから町の中にあんなもの建てるのは反対だったんだ」 「ロンドン・アイ、ふたりで乗ったわよね?」 「テームズ川は、心のふるさとなんだ」 「いいところでお父さんが現われたら台無しよね」 「馬に蹴られるような真似はしない。登場はその直後だ」 「『口づけを交わした日は、ママの顔さえも見れなかった』」 「なんだ、それ?」 「歌の歌詞ですよ」 「クールな自分を見失いかけた」 「ふつうですよ」 「目がきょどってないか?」 「ふつうよ」 「まあ、観覧車には爆破予告の電話をするとして、だ」 「いいけど、オカマ声はやめてね」 「母さん、念のため言っておくが、あれは悪ふざけだ」 「知ってるわ」 「信じてくれ」 「はいはい」 「結局、私たちが乗ることになったのね、観覧車」 「何事も予習復習だ。俺は照れ屋なんだ」 「行き当たりばったりも素敵よ。期待以上の事が起きるかもしれないし」 「たしかに。ぎちぎちのスケジュールだと、そもそもサプライズの生じる余地がない」 「どうしたの? 『しまった』って顔して」 「今のをハルヒに伝えるの忘れてた。ああ、親らしいこと、何もせずじまいだ」 「平気よ。どうせ聞く耳もたないもの」 「だが、母さん。あれは、ああ見えて勝負パンツをはいていくような娘だぞ」 「『お父さんの親心は、おじさんの下心』よ」 「なんだ、それ?」 「ことわざですよ」 「新しい自分を見つけ損なった」 「よかったですね」 「声、うらがえってないか?」 「大丈夫」 「しかし、こんな密室に二人きりで向かい合って、恥ずかしくて死ぬんじゃないか?」 「同じ側に隣り合って座る手もあるわね」 「ああ、それならお互いの顔を見なくて済む」 「こんなに近くにいるのに、もったいないわね」 「俺たちも、いいかげん素直になろう」 「あら、私はずっと素直ですよ」 「わかってる。我が家でツンデレは、俺と娘だけだ」 「三分の二いれば、憲法も変えられますよ」 「そうなのか?」 「違ったかしら」 「眼下の下界を見ろよ。人間がアリのようにたかってる」 「夜景には早いけれど、きれいね」 「母さん、吊り橋効果って知ってるか?」 「ええ、保健の時間に習いました。たしかシャクターの情動二要因説(1964)やダマジオのソマティック・マーカー仮説(2000)と一緒に」 「そうなのか?」 「違ったかしら」 「さあ、たっぷり楽しんだな」 「そうですね」 「あとは、若い連中をからかいに行くだけだ」 「ひかえめにね。『やーい、やーい』は、やめてね」 「あれ、嫌がるんだぞ」 「されるのが嫌というより、『これが自分の親』と思うのが嫌みたいですよ」 「うまいぞ、母さん。『親』と『嫌」をかけたんだな」 「いいえ」 「他に禁則事項はないかな?」 「女の子だから、残るような傷はちょっと」 「顔以外の傷は、見たらクーリング・オフは認めんぞ」 「ハルが小さい頃は、毎日、なま傷だらけで。きれいに治ってよかったわ」 「男の子がするような遊びしかしなかったからな」 「息子の方がよかったの?」 「息子だったら、俺が殺されてるか、殺してるよ」 「そうなの?」 「ああ、俺が息子だったらそうしてる」 「ふふ、ハルヒが女の子でよかったわ」 「心底そう思う。だが、うまく伝わらないんだ」 「表現方法を変えてみたら?」 「今度そうする。だが、恥ずかしくて死にそうだ」 「それもいい手かも」 「生まれ変わったら試してみる」 「あの子たち、この中にいるの?」 「隣のビルとつながってるチューブみたいのがあったろ。あれが展望台なんだ。今だと、夕日が正面でロマンチックだ」 「このロビーで待つの?」 「あそこの色の違うエレベータが展望台直通のやつ。あいつらは事がすんだら、あそこから出てくる予定だ。そっちに喫茶があるから、座れるし、お茶も飲める」 「ハルヒ、それとキョン君だったかな? Comment allez-vous?(コマンタレブー)」 「な、なにしてるのよ!?こんなところで」 「母さんと二人で青春してるんだ」 「まさか、つけてきたの? 最低!!」 「自分ばっかり幸せになれると思ったら大間違いだぞ。幸せは分かち合うもんだ」 「母さんまで、この悪魔に魂売ったの!?」 「キョン君、君はまだやり直せる。いっしょに日本へ帰ろう!」 「キョンに指一本でも触れたら承知しないわよ!」 「ラブラブだな、このツンデレ娘」 「親父にだけは言われたくないっ!」 「じゃあフラクラか?」 「娘相手にどんなフラグ立てようっての?」 「死亡フラグ」 「覚悟はできてるようね!」 どうしたらいいのか、いや何がはじまったのか、見当もつかず途方に暮れていると、いきなり襟首をすごい力でひっぱられた。 ハルヒ?は前にいるよな、ってハルヒの母さん? おまえのアレは、母親ゆずりだったのかよ。 「少し離れて見てましょうね。キョン君までケガしたら大変」 「止めなくていいんですか?」 普通は娘の心配をしませんか? 「もう無理よね。こんなにおもしろいもの」 ああ、最後の頼みの綱だったが、この人も駄目だ。 「仕事で家を空けることが多いせいかしら。会うと愛情表現が過激になっちゃうみたいなの」 ころころ笑うところじゃありません。 「ハル、今日はキョン君も呼んで夕食よ。母さん、本気出すから、早くしとめて帰りましょう」 ハルヒは顔は敵(父親)に向けたままだが、親指を立てて(いわゆるサム・アップだ)、多分「OK」の返事をした。 「いつもは、本気じゃないんですか」 と、当たり障りなくて、どうでも良さそうなところに突っ込んでしまう。 「そう毎日だと家計がねえ。普段はどうしても時間とか値段とか効率を考えてしまうの。今日はそういうリミッターなしだから、楽しみにしててね。『さすがハルヒの母さんだ』ってところをお見せするわ」 すみません。俺にはお見せできるようなものが何もないみたいです。 「いいのよ、そんな」 「今はこれがせいいっぱい……」 どこかで聞いたようなことを言って、俺は闘争オーラの震源地へ、びびりながらも2歩、3歩踏み出した。 「一家団欒のところお邪魔してすみません」 「キョン君、下がっていろ。手負いの娘が何をするかわからん」 「このバカ親父!!」 俺はすうと息を吸い込んで、低く押さえ込んだ、しかしよく通る声の出し方で言った。 「おいハルヒ、やめとけ」 「うっさい、邪魔するな!!」 「やめないとな・・・別れるぞ」 「「!!」」 音速の壁を越えて父と娘が同時に俺につかみかかってきた。ああ、ハルヒのお母さん、後のことはお願いします。 「お、親の前で、だ、だ、だれが、あんたと、つ、付き合ってるみたいなこと言うな!!」 「……」 「親父、何黙ってるのよ!!」 「いや、突っ込もうか、おちょくろうか、嬉しいような、寂しいような、複雑な心持ちでな。ところでハルヒ」 「なによ!?」 「キョン君、もうオチてるぞ」 「あ」 親の前だとか、いきなり既成事実だとか、パニっくって力の加減ができなかったとか、言い訳はしたくない。結局、意識を失ったキョンは親父が蘇生させて、そのまま親父がおぶって帰った。あたしが、と主張したんだけど、 「若い兄妹を売る奴隷商人に見られたらかなわん」 という訳のわからない親父の言い分が通ったのだ。無理を通せば道理が引っ込むって奴だわ。 母さんは母さんで、キョンの家へ電話をして何やら調子の良い嘘話をこさえて(確かにうちの娘が息子さんの首を絞めましたので、夕食を食べていってもらおうかと、とは言えないわよね)キョンの親御さんを説得し、その前に電話してあったのか、話が終わって建物の外に出ると、タクシーが私たちを出迎えていた。親父とキョンと母さんが後ろに乗って、あたしは一人、運転手さんのとなりの前の席。母さんが無言でそう促したのに従った。 キョンといるところをうちの親に見られて、ううん、うちの親をキョンに見られて、どうしようもないくらい動揺してたのは確か。怒りをあおった親父に乗ったのも,混乱と照れを隠すため。そこにキョン、あんたまで乱入してきて、さすがの私もオーバーフローよ。パニックにもなるわ。でも、あんた、あたしを止めようとしたんだよね。それくらい、分かるよ。分かる過ぎるくらい。あんたがどういう奴で、あの場面に居合わせたら、何を考えて、どうしようとするかぐらい、百もお見通しよ。だから,今は自分が情けない。 「おい、こいつ。なかなかやるな」 バカ親父が何か言ってる。もう黙っててよ。娘が泣いてるのに、責任ぐらい感じなさい。 「『こいつ』なんて呼ばないでよ。ちゃんと『キョン』って名前があるんだから」 「『キョン』は、ちゃんとじゃないだろ……。わかったよ。キョンはすごい奴だ」 「『キョン君』でしょ」 「はいはい。キョン君は、なかなかのもんだ」 「キョンが目覚ましたら、その無駄口、ふさいでよね」 「混乱に混乱を、か。ベタだがなかなか思いつかん。思いついても普通は選択せん。ずいぶんと修羅場をくぐってるのかな、この若者は?」 「知らないわよ」 「おいおい、知らなくていいのか?」 「知ってても、あんたに言う必要ないわ」 「そりゃそうだ」 親父はそっぽを向いて、アヒルみたいに口をとがらせる。子どもみたい。恥ずかしいから止めて。 「昔、父さんの親友二人がな、ちなみに男と女で、そのうち夫婦になるんだが、ちょっとしたレストランで痴話喧嘩を始めた。気性の荒い二人でな、飛び交うのは怒号だけじゃすまなくなって、両方が同時にナイフとフォークを握りしめて立ち上がった。俺はそいつらの向かいで飯を食ってたんだが、店中の人間が父さんを注目しているのに気付いた。『止めてくれ』ということらしかった。その国の言葉は、まだあんまり得意でなかったんで、細かいことはわからんが。父さんは、とっさに自分たちが食事していたそのテーブルを蹴り飛ばしてひっくり返す手を思いついた。でかい音と衝撃で、気をそげるかもしれんと思ったんだ。だが、実行は躊躇した。テーブル・マナーはいくらか教えてもらったが、犬も食わないケンカにテーブルを蹴飛ばしても可、なんて常識はずれもいいところだからな。もう一度、他の手はないか考え込んだ。父さんも若かったから口では『常識なんてくそくらえ』と言っていたが、いざそんな場面に投げ込まれると、自分が骨の髄まで常識に染まってるのを思い知ったよ。結局、父さんがテーブルを蹴飛ばすよりも早く、女のフォークが男の胸にぶすり。……ハルヒ、全然信じてないだろ、今の話」 「親父、その話、怪談になってる」 「しょうがない。母さん、胸の傷を見せてやれ」 「バカじゃないの。刺されたのは男でしょ」 「そうだ。言ってなかったが、母さん、昔は男だったんだ」 「だったら、あたしはどこから生まれたのよ」 「そりゃ、おまえ、コウノトリをおびきよせて孕ませたんだ。だが、そのコウノトリは本当はハゲタカだったんだ」 「母さん、このバカ、いますぐ捨ててきて」 「父さんは、この若者、気に入っちゃたな。お前が捨てるなら、俺が拾うぞ。お前にオトされるようじゃ、少々線は細いが、なに海兵隊に2年もぶち込めば、口で糞たれる前と後にSir.をつける立派な若造になる」 「訳わかんない。捨ててないし、勝手に拾わないで」 「今時の若いもんを見直したってことだ。……よし、来年は冬コミにサークル参加するぞ」 「はあ?」 「サークル名も決めた。涼宮家を大いに盛り上げるソフィスケイトされた大人の団、略してSOS団だ。ガキは入れないから安心しろ」 「母さん、親父が壊れた。新しいの買っていい?」 「はいはい」 はいはい、じゃないでしょ。誰か何とかして。キョン、いいかげん目をさましなさいよ。や、やっぱ駄目。寝てなさい。目が覚めても寝たふりしてて。 気がつくと、事態は修羅場から、魅惑の食卓へと激変していた。 俺たちはナプキンなどつけ、出ては下げられ、また出ては下げられていく何枚もの皿の上の料理を食べている。 「お、おい。ハルヒ」 「なによ。ちょっと、顔が近いって」 「すまん。しかし、これ家で出てくるような料理じゃないぞ」 「あの人は無駄になんでもできるのよ。若い頃、フレンチの店、してたこともあるみたいだし」 「まじか?」 「金持ちのじじいに金出させて、店出したんだって。シェフもギャルソンもソムリエもピアニストも全部自分ひとり。テーブルも一つっきりで予約のみ。親父と出会うまで続けてらしいんだけど。本人の話だし、あてになんないわ。『日本じゃないのよ』とか言ってたし」 「まじか?」 「小学校も途中までしか行ってないとか、14の時には日本にいなかったとか。そういう『伝説』みたいなことしか、自分のこと言わないの。たしかに語学は親父よりできるみたいだけど、発音はきれいだし。親父は何語しゃべってもカタカナね。あれでよく通じるわ。まあ母さんの方が、娘をからかわないだけマシだけどね。最近そうでもないけど」 そこで何故「じとっ」とした目で俺をにらむ? 「わかんないなら、いいわ。あ、親父、醤油とって」 「フレンチに醤油はないだろ?」 「何言ってんの?このソースにも使ってあるわよ。だったらソイ・ソースとって」 「それ醤油と同じだ。母さん、このソースだが……」 「ええ、使ってますよ、お醤油」 「……キョン君、お互い苦労するなあ」 「はあ」 「愚かしくもバカバカしい店があるんだが、憂さを晴らしに今度飲みに行かないか?新しい友情のはじまりだ」 「キョン、知らない親父に着いて行っちゃ駄目よ。死刑だから」 いや未成年だし。そんな店、行きたくないし。友人は選びたいし。親は・・・選べないんだよな。 「母さん、娘がグレた。次のと交換していいか?」 「次の、って何よ?」 「……教えない。だが、眼鏡っ子で巨乳とだけ、言っておこう」 「むー、巨乳は垂れるんだからね!」 論点が違う!・・・よな? おわり (別の日の食卓にて) 「そういえば、あたしが親父の頭を蹴って、親父が平気な振りして笑ってた話をしたら、キョンの奴、なんて言ったと思う?『子どもみたいだな』『でも、そういうの嫌いじゃないぞ、オレは』だって。ばっかじゃないの!」 「おお、心の友よ!!」 「あんたはジャイアンか!?」 ほんとにおわり ▲ページのトップへ
https://w.atwiki.jp/haruhioyaji/pages/317.html
「バカ娘、なんだ、そのアブナイ人のコスプレは?」 「この、バカ親父! コスプレじゃないわよ、勇者よ、勇者!」 「勇者って、尊称だろが。少なくとも自称するもんじゃないだろ?」 「うっさい! そういう設定よ、世界観よ! 受け入れなさい!」 「で、雑用係、おまえは、行商人か?」 「いや、いちおうクラス的には僧侶みたいで」 「生臭坊主か?」 「キョンはそこまでエロくないわよ。……エロいけど」 「どっちなんだ? ついでに教えてやるが、生臭坊主ってのは、戒律で禁じられている魚や鳥獣類の肉といった生臭物を食べる坊主のことだ。別に女を抱くわけじゃない。まあ、江戸時代にはすでに「怠け者」を指すコトバにもなってたんだがな」 「エロい上に、怠け者? ど真ん中ストライクじゃないの!」 「えらい言われようだな、キョン。で、経でも読むのか?」 「さあ。西洋の僧侶なので、回復魔法とか、そういうのでは?」 「長門、おまえはそのままだな」 「有希は魔法使いよ!」 「……ある意味、そのままだな」 「そう」 「で、イケメン、おまえはどこのファンド・マネージャだ?」 「この中世的世界では、そこまで経済が発達していないのでは?」 「中世を舐めるな。ヨーロッパの今ある大都市はみな中世に商業地として発展を遂げてる。で、悪徳商人か?」 「まあ、それに近いものかと」 「後藤、おまえもいい歳なんだから、特攻服はやめとけ」 「これは特攻服じゃありません。それから中の人の名前で呼ばないで下さい」 「みくるちゃんは、闘うウエイトレスよ」 「……おまえも苦労するな」 「ぽんぽん、と肩を叩かないで下さい」 「そうよ、セクハラよ!」 「おまえにだけは言われたくないぞ、バカ娘」 「で、あんたはなんでいるのよ?」 「うむ。ロープレやり込んでたら、いつのまにかゲーム世界へ、ってやつじゃないか?」 「おっさんのくせにゲームばっかりしてるからよ!」 「いや、やりこんでたのは『ラブプラス』だったんだが」 「とっとと帰りなさい!」 「要するに、岩に突き刺さった剣を引き抜いて、勇者の証をたてて、ラス・ボス倒して、世界を救えばいいんだろ。さっさとやっちまえ」 「なんで、あんたが仕切るのよ!」 「とかなんとか言ってるうちに、エンカウントだ。なんだか小さいモンスターだな。動物虐待だぞ。猟奇殺人するやつって、最初は小さな動物を殺すところからはじめて、段々大きなものを殺す喜びにハマって行くんだよな」 「あーもう!後ろへ下がってなさい!」 「やれやれ。……おいおい、キョン、腰が引けてるぞ。バカ娘、剣で殴るな、押し当てて引くんだよ、なんのために刃を研いであると思ってんだ? ビーム? おもいっきり飛び道具じゃねえか。イケメン、計算は倒してからにしろ、とんだ皮算用だ。で、結局一番効いたのは、お盆をひっくり返して熱湯浴びせる攻撃かよ?」 「後ろでごちゃごちゃうるさいのよ!」 「親父ってのは、ごちゃごちゃツッコミ入れながら、テレビ観戦するもんだ。さてと……」 「な、なによ、ヘンテコな刃物持って」 「何って食うんだろ?」 「「「「食う!?」」」 「それ以外にどうやって食料確保するんだ? おれたちゃ任務の性質上、どっかに定住して畑を作る訳にもいかんだろ」 「あんたの職業(クラス)って、まさか?」 「そうだ、コックだ」 「って、どこのセガールよ!?」 その2へ
https://w.atwiki.jp/haruhioyaji/pages/353.html
「……ねえ、母さん、親父は?」 「やっぱりダメみたいね。向こうもすごい雪で、とても飛行機飛びそうにないって」 「まったく。年越しを何だと思ってるのかしら」 「お父さんも残念そうだったわ」 「あ、あたしは別に……」 「そうそう。ハルヒには謝っといてくれって、お父さんが」 「たまには殊勝なこと、言うわね」 「それから、『手は打っておいた』って。心当たりある、ハル?」 「……ない。……でも、すごく嫌な予感がする」 「母さんも、嫌な感じはしないけど、そろそろ誰かやって来そうね。お湯を沸かすわ」 「ハルヒっ!!」 「な、なによ、今の? って、キョン!?」 「息切れしてる声、走ってきたみたいね。ハル、早く行ってあげなさい」 「キョン!……あんた、いつから雪だるまと縁続きになったのよ!?」 「は、ハルヒ、無事か?」 「無事も何も……って、親父の奴ね!」 「ああ、親父さんから血相かえた電話があって……大丈夫、みたいだ…な……」 「母さん、親父、どこ!?」 「だから雪国に」 「ああ、もう! なんで携帯ってこんなにつながらないの!? 親父、出て来なさい!!」 「……バカ娘、いくらなんでも携帯に小人が入ってるってボケはないぞ。乗りツッコミしようにも小さすぎて乗り切れん」 「うっさい! どういうこと!? 説明しなさい!」 「おまえこそ、説明しろ。何を怒ってる?」 「今,キョンが血相変えて走って来て、事切れたわ!! どうしてくれんのよ!?」 「心配するな。男なら星の数ほどいる」 「ふざけんな!! キョンはひとりっきりでしょ!」 「『だったら普段から、もう少し大事に扱え』fromキョン魂の叫び」 「勝手なナレーション入れるな!」 「キョン君、立てる? 玄関、寒いから居間に来て座って。ハルも、お父さんと遊んでないで、雪落としてあげなさい」 「す、すみません。……なんか勘違いで、大騒ぎしてしまって」 「ううん、今回に限っては、あんたはなーんにも悪くないわ! むしろ被害者と言っても過言じゃない!」 「『それをいうなら、いつもだ』とキョンは思った」 「親父は黙ってなさい!!」 「だったら携帯、切れば良いのに」 「うわ、キョン、あんたガチガチよ! 母さん、お風呂は?」 「やかんをかけるのと同時にスイッチを入れたから、そろそろお湯がはれてると思うけど」 「ちょっとキョンを戻してくる! 立てる? ほら、肩貸すから」 「……バカ娘の声が遠ざかっていく。母さんはまだいるかな?」 「ええ。お父さん、ご苦労様」 「苦労なのは、いつもキョンの役回りだ。なんか暖かいものでも食わしてやってくれ。そっちも雪はひどいのか?」 「ええ。ロマンティックなくらいにね。素敵な年越しをありがとう、お父さん」 「ちぇっ、いいなあ」 「たまには裏方も悪くないものよ」 「違いない。名案が浮かんだんだがな、母さん」 「何かしら?」 「このまま数日間閉じ込められた後、ただ家に帰るというのも、正月に遅刻したみたいで面白くない。逆にだ、そっちがここに来るってのはどうだろう?」 「そうねえ。スキー場と温泉があるのね?」 「イエス、マム。あと今回の仕事で点数稼いだからな、町をあげて無理を聞いてくれるぞ」 「ふふ、考えておきます」 「期待してる」 「ええ。お父さん、良いお年を」 「ああ、母さんも。それから、あいつらにも」 親父抜きの大晦日その後へ
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/9070.html
登録日:2009/08/06(木) 00 28 13 更新日:2024/02/05 Mon 01 32 52NEW! 所要時間:約 2 分で読めます ▽タグ一覧 エディプスコンプレックス パパ 漢 父 父さん 父親 白ひげ 空気 親父 超えるべき壁←もはや昔の話 1. 親父(おやじ) 父親に対しての呼称の一つ。 また、中年の男性に使われたり、他にも上司や上長(ボス)、いきつけの店の主人等に対して親しみを込めた呼称でもある。 ただし、使い方によっては相手を見下したり蔑称になるので注意しよう。 特に「オヤジ」と描かれる場合は大抵が悪い意味。 元は「親父(おやちち)」が転じたもの。 昔は「地震・雷・火事・親父」と言われるくらい恐れられた存在だったが、現在では見る影もないくらい落ちぶれている。 ドラマや二次元ではカッコイイ存在としてよく出るが、リアルではほぼ絶滅している。 2. 選ばれた男にしか名乗る事を許されない称号。 稀に兄貴から進化する場合がある。 亜種は、おじ様。 主にネットで使用される。 基本は扱いが悪く軽く見られがちな中年キャラだが、中には、若造には無い魅了があるキャラもいる。 そういった人物に親しみを込めて付けられる素晴らしい称号。 一例 野原ひろし(クレヨンしんちゃん) 高屋敷寛(家族計画) 法月将臣(車輪の国、向日葵の少女) ギーラッハ(吸血殲鬼ヴェドゴニア) 葦野竜(そして明日の世界より――) 遺作(おやぢシリーズ) 臭作(〃) 鬼作(〃) テオロ(うたわれるもの) 泉戸裕導(タユタマ) ジェクト(FINAL FANTASY Ⅹ) シド(〃) 浅井権三(G線上の魔王) 目玉おやじ(ゲゲゲの鬼太郎) ロージェノム(天元突破グレンラガン) バラン(ダイの大冒険) 海原雄山(美味しんぼ) ダースベイダー(スターウォーズ) 蒼月紫暮 (うしおととら) 黒騎士ファウスト(さよなら銀河鉄道999-アンドロメダ終着駅-) “白ひげ”エドワード・ニューゲート(ONE PIECE) パラガス(ドラゴンボールZ) 宿の亭主(CardWirth) 追記、修正は一升瓶片手によろしく △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] パラガスくそわろた -- 名無しさん (2014-01-28 16 19 14) ウルトラセブンも追加すべき -- 名無しさん (2014-06-29 09 09 32) 現実だったらやはり高田純次さんが至高の親父かなあ -- 名無しさん (2014-06-29 09 21 16) 以前、職場で「親父」と呼ばれていたが、退職直前「仙人」に進化した。 -- 名無しさん (2014-09-27 01 29 43) やったぜ。 -- 名無しさん (2014-09-27 02 19 15) タユタマだったっけかメインルートの主人公の状態に対する台詞が好きだな、子がどんなに変わろうとも子は父親が守るべき存在であるっていうかんじのあのセリフ -- 名無しさん (2016-06-08 14 40 02) こんな項目もあるのかwwww -- 名無しさん (2019-09-26 09 43 54) パラガスは親父ぃです -- 名無しさん (2020-05-16 19 54 27) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/haruhioyaji/pages/295.html
親父さんと谷口くん4から 谷口 親父師匠! 親父 誰かと思えば谷口か。今日は何だか悩んでなさそうだな。 谷口 はい。あれからいろいろ紆余曲折ありましたが、なんとかデートの約束までこぎつけるところまで行きました。 親父 そうか、100人斬りナンパ・エクスポージャまでやったのか。 谷口 はい、断られるのが前提で声をかけるのは、なかなかきついものがありましたが、確かにたかだか断られるだけ、誰も声をかけるなりゲロを吐いたり殴ったりする人はなかったです。 自分が内気だとは思ってませんでしたが、それに気付いて克服することができました。今では鼻からスパゲッティ食べて逆立ちでグランド1周くらいできそうです。 親父 そうか。しかし鼻からパスタはやめておけ。で、今日は? 谷口 はい。ご報告と、最後のアドバイスをいただきに参上つかまつりました。 親父 うむ。まあ、ドタキャンされても泣かないようにな。 谷口 今度は大丈夫であります。 親父 そうか、何度もそういう目にあったのか。では、最後に3つのアドバイスを授けよう。 谷口 ははっ。 親父 その1。待ち合わせには、10分ほど遅れろ。 谷口 えっ? 親父 最低10分は遅刻しろ。 谷口 それはなんで? 親父 意味は何重にもあるんだが、最も大きいのは、待ち合わせする集団では最後に着たものが一番偉い、という法則があるからだ。なんとなれば、もし最後に着たやつが偉くもなんともなければ、みんなはそいつを待たずさっさと行ってしまうだろう。 谷口 な、なるほど。 親父 ついでにいうと、初デートのときは、女性が遅れてくることが多い。というより、むしろ男は何分も先に着て待っていることが多い。自分が女日照りで女性経験が少ないと告白しているようなものだ。足元見られる、というか、その手合いは食いモノにされることが多い。女性から見ると、どれだけ自分の言いなりになるか、それで計れるからな。 しかし、男の方は、10分の遅刻が無限大のリスクのように思えて耐え難い。これまでの苦労が水の泡になるんじゃないか、とハラハラしてしまって、ついつい時間より早く着いてしまう。ここは自分との戦いだ。イニシアティブを握るためには、遅刻せよ。 10分程度で怒って帰ってしまう女なら、どうせ長続きはしない。そして自分を待っている男と、自分が待ってなきゃいけない男とでは、希少性が違う。後者の方が希少性が高く、より価値が高いように感じる。脳がそういう風にできてるんだ。 無論、誰もがケータイを持ってる時代だ、電車が遅れてて時間に間に合いそうにないと、まともな理由を先に電話しとけ。もしケータイの番号をまだ知らないなら、今度こそ教えてくれるだろう。 谷口 ははあ。いきなり目からうろこです。そういうものですか? 親父 その2。デート中は、自分の話をするな、相手の話を聞け。まあ、これは基本中の基本だが、勘違いする奴もいるので注釈する。聞けといっても、相手のことを聞き出そうとするな、相手の話を聞き流せ。 谷口 流すんですか? 親父 そう、食いつくな。相手の情報に飢えているところをあからさまにするのは、待ち合わせの何十分も前から待っているのと同じ事だ。だから、こちらからは質問するな。中でもイエス/ノーで答えられる、いわゆる「閉じた質問」はするな。逆に相手が質問してきたら、なるべく短く答えて、向こうに同じ質問を返せ。「女:兄弟はいるの? 男:兄が一人。君んとこは? 女:うちは姉と妹」って流れだな。 谷口 聞き流してしまうと、相手に怒られませんか? 親父 「聞き流し」は、相手を無視することじゃない。ちゃんと相手のほうに自分の体を向けて、顔を見て、あいづちを打つ。全身で聞いてます、というシグナルを出せ。そして相手の細かい表情、しぐさ語ってることを見逃すな。声の大きい奴ほど、話すことで何かを隠してる。無口な人の方が、表情とかしぐさでいろんなことを教えてくれてる。 谷口 は、はい! 親父 「流す」というのは、こちらから話題を掘り下げたり、詳しく聞きだしたりはしない、という意味だ。相手がつくる流れにそのまま乗っかって、自分の方で流れを作ったりしない、ということだ。初デートの会話の失敗パターンは、一番多いのが自分のことばかり話す、次が無神経にプライベートなことを聞き出そうとする、だ。相手の事が知りたいのは無論当たり前だが、そんなのはつながりが切れなければいくらでも機会がある。また、好きなものをわざわざ質問して答えさせるのは、「それをプレゼントします」と言ってるようなもんだ。 谷口 な、なるほど。 親父 いいか、谷口、恋の駆け引きはケチが勝つ。なるべく与えず、自分の愛情の希少性を高めたものが主導権を握る。ご褒美ってのはな、毎回与えた方が勝負は早いが、相手が「腹いっぱい」になって飽きたり食傷したりするのも早い。与えるものは、言葉でもモノでも、機会の度にではなく、何回に一回,にした方が、ご褒美がなくなったときでも同じ行動が続く。最初は頻度高く、段段低くしていくんだけどもな。 最も良いやり方は、何回に一度の確率でランダムに与えたり与えなかったりすることだ。こうなると、ご褒美で強化された行動は、ご褒美がなくなったとしても、最も長く維持される。これはギャンブルのパターンそのものだ。だからギャンブルから人はなかなか抜け出せん。同じく、気まぐれ女に、男がはまる理由でもある。この辺は、女性向けだが『THE RULES-理想の男性と結婚するための35の法則』って本が分かりやすいだろ。 谷口 ははあ、この谷口、不明でありました。 親父 このシリーズ、おまえ、キャラ変わってないか? その3。デートのスケジュールはタイトに、移動時間は最低限に、だ。あるいは移動自体をイベントにしろ。出来事をつぎつぎ起こせ。迷うな、相手に聞くな、考えさせるな。予定変更は折り込んでおいて、オプションを用意しとけ。あっという間に一日が終わるように、出来事で埋め尽くせ。コース料理だから、ひとつひとつは軽いものでいい。バリエーションは欲しいけどな。 谷口 あの、別れ際に、次のデートの約束をするのは? 親父 希少性といったろ? それは向こうから言わせろ。言ってくるまで待て。別れ際は、相手が見えなくなるまで見送れ。そして、しばらくはその場で、その日の一人反省会でもして、ぼーっとしてろ。ごく稀だが、相手が戻ってくることがある。あるいは、もう少しだけましな確率だが、お礼のメールが帰ってくることがある。 谷口 そ、そのときは、また会っていいんですか? 親父 いいとも。戻ってきた場合は言うまでもないな。お礼メールには「こっちこそありがとう。今、さっき別れた場所で今日のことを思いだしてた」と本当のことを返答しろ。向こうにも、共有してるはずの記憶を思いだして思いたいからだ。「きみのことを思いだしてた」だと、おまえのすけべ心だけがつたわる。ここでも確率は高くないが、相手が戻ってくることがある。本当におまえがいたら、ちょっと感動モノだろ? 谷口 は、はい。 親父 まあ、普通はそのメールに「また、会おうね」程度のメールが帰ってくるくらいだが、ここがポイントだ、谷口。ほんとのナンパはな、こっちがして欲しいこと、言って欲しいことを、相手から《自発的》にやってもらうところに成立する。そのためのしこみがすべてだ。人にむりやり言わされた言葉は消えてなくなるが、「自発的」に口にした言葉や行動は、そいつの中に残って、その後の言葉や行動を方向づける。魔法はかかった、ということだな。ロバート・B・チャルディーニの『影響力の武器』でいう「コミットメントの原理」の応用だ。……まあ、がんばれ。グッドラック。災いが汝を見失うように。 キョン あの、親父さん。 親父 キョンか。友人のこととは言え、立ち聞きはマナー違反だぞ。 キョン すみません。 ハルヒ あんたがまた、トンデモ発言をしないか見張ってただけよ。 親父 おまえもか。ハルキョンに聞かれるとは、運のない奴だな。 ハルヒ どういう意味よ。 親父 なんか、おまえら幸せのブラックホールだろ。 ハルヒ 失礼な。人様の幸せなんて入らないわ、配って歩きたいくらいよ! キョン 谷口の奴、あれでうまくいくんでしょうか? 親父 どうだろうなあ。相手の娘が、どういうのか分からんしな。そういや成果については、今まで考えたことがなかったな。 ハルヒ 無責任な! 親父 責任を感じて、こっそり覗いてやろう。 ハルヒ やめなさい! それでなくても、あんたは前科があるんだからね! 親父 まだ、根に持ってるのか。あれで、キョンは涼宮家公認になったというのに ハルヒ そんなのありがたくも何ともないわ。 親父 しかしバカ娘、今のは名案だ。……もしもし、おれだ、親父だ。明日、どこで何時に待ち合わせだ? ああ、方位と時刻で運勢を占ってやろうと思ってな。なるほど10時に@@駅の西口か。待ってろ、結果はメールしてやる。それじゃ頑張れ。無理はするなよ。……ざっと、こんなもんだな。 ハルヒ 詐欺師。 親父 占いなんて、半分は暗示、残り半分は詐欺みたいなもんだ……よっと。 キョン なんですか、それ。 親父 自作の占いソフトだ。 キョン さすが、親父さん。なんでもありですね。 親父 寿司占いにするか。 ハルヒ 日時と場所に、何の関係もないわね。 親父 そうでもないぞ。寿司ネタに惑星を対応させてるから、一応ホロスコープができる。 ハルヒ だったら、普通の占星術でいいじゃないの! 親父 日本向けにローカライズしたんだ。 ハルヒ 日本を勘違いしているガイジンみたい。 親父 ちなみにハラキリはヨッドの意味だ。 ハルヒ 無理にややこしくするんじゃない! (デート当日) ハルヒ ふーん、なかなかかわいらしい娘じゃないの。ほら、キョン、口を開けなさい。あーん。 親父 おまえら、なんで付いて来てるんだ? ハルヒ 親父の暴走を止めるために決まってるでしょ。もう、キョン、口元汚れてる。 親父 おれの財布でデートってわけか。 ハルヒ そうよ。たまには親父らしいことしなさい! 親父 娘のデートに同伴して、金を出してる親父なんてどこにもいないぞ、多分。 ハルヒ なんか、二人ともあんまり喋んないわね。 親父 普通はあんなもんだ。おまえらが、というか、おまえが喋りすぎなんだ。 キョン それにしても、あの谷口が聞き役に徹してる。親父さんマジックだ。 ハルヒ あんまり喋んない娘相手にそれやると、空気が重苦しくならない? 親父 悲しくなるほど、見る目がねえな。喋らない奴だって、言いたいことや話したいことを持っている。いや、考えずに喋りつづける連中よりも、頭の中にそういうのをたくさん抱えてたりする。声にならなくても、表情や目の動きや細かいしぐさで、あの娘は、いろんなものを谷口に知らせようとしてる。自分が静かにしてないとな、そういうものを見落としがちなんだ。 ああ見えて、谷口もこの間いろいろあったんだろう。一生懸命、聞こえない声に耳をすましてる。それが彼女の方にもわかるから、だんたんとしぐさや表情がはっきりして来た。ここらへんがフッサール・ポイントだな。もうすぐチョムスキー臨界を超えるぞ。 ハルヒ なによ、それ。 親父 彼女が何か言うってこった。ほら。 彼女 あの……ごめんなさい。……谷口さん……楽しくて、いっぱい喋る人って、……聞いてたんです。 谷口 え、あ、ああ。ごめん、退屈だったかなあ。普段はべらべら、あることないこと、確かに喋るけど。 彼女 あの、……あたしじゃ話づらいですか? 谷口 いや、全然そうじゃなくて! おれ、あんまり頭良くないから、ちゃんと説明できるかわかんねえけど、ある人にこんなこと言われたんだ。『声の大きい奴ほど、話すことで何かを隠してる。無口な人の方が、表情とかしぐさでいろんなことを教えてくれてる』って。今日やっと、なんか、それが分かった気がする。 彼女 ごめんなさい、あの、あたし、すぐに赤くなったりして、言いたいことの半分も言えなくて、それで……。 谷口 いや、おれも、その、女の子が大好きで、よくナンパとかしたりするんだけど、全然うまくいかないんだ。で、その人に相談したら、今みたいに言われてさ。おれ、多分、自分のことばかり喋って、相手のこと全然見てなかったんだな。@@さんは、話してるおれのこと、ちゃんと見てるな、って思った。おれが何か言ったら、絶妙のタイミングでうなずいてくれるし、今の話はびっくりしたんだな、とか、あ、いまのは面白かったんだな、って、よく分かる。あれ、おれ、何言ってんだろ? 彼女 始めてです。 谷口 え? 彼女 そんな風にあたしのこと言ってくれた人。そんな風にあたしをちゃんと見てくれた人。 ハルヒ あれ、ちょっと、キョン、親父、どこいくの? これからってとこじゃないの? 親父 バカ娘、これ以上は有料チャンネルだ。 ハルヒ 何バカなこと言ってんのよ!こら、親父! 親父 バカはおまえだ。 キョン ……ハルヒ。 ハルヒ 何、キョン、この手? キョン 親父さんには悪いが、二人でこれからどっか行かないか? ハルヒ え?え? キョン 駄目か? ハルヒ 全然駄目じゃないけど、放っておいていいの、あの二人? 親父 放っておいた方がいいんだよ。 ハルヒ あのアホの谷口よ、これからどんなヘマやらかすか、わかりゃしないわよ。 親父 だとしても、あとは神のみぞ知る、ってことだ、バカ娘。あの後、谷口がバカやって振られるなら、それもまたよし。マトモにコミュニケーションが取れた相手から、やっとマトモに振られることになるんだからな。経験値ってのは、こういうところで稼ぐんだ。 とりあえず友達から、っていうなら、なおよし、だ。そんなとこだろ、なあ、キョン? キョン そうですね。しばらくは、彼女の話ばかり、聞かされそうだな。 ハルヒ あんたたち、甘い甘い大甘よ! そんなうまい話、あるわけないでしょ! 親父 やれやれ。自分たちのこと棚に上げて、どの口で言うんだ? 親父さんと谷口くん その1 その2 その3 その4 その5 親父さんと谷口くんエピローグ
https://w.atwiki.jp/haruhioyaji/pages/40.html
本シリーズの親父さんは、ほっといてもどんどん喋ってくれる、作者にとっては、こんなに楽なキャラクターもないのですが、いかんせんその発言の廃棄率は高いです。 使えないもの、ストーリーには要らないのでカットされるもの、使いたくないもの、と様々ですが、 「もったいないもの」をトップページに表示して、あとはこの「保管庫」に保管していこうかと、思います。 「人生の98%はゴミみたいなもんだ。だが最悪なのはそこじゃない。残りの2%があることに気付かないまま、そして、あきらめたまま死んでいく。これこそ最悪だ。 おい、目を覚ませ。立って支度しろ。人生の2%がはじまるぞ。 」 (2010.04.01) 「もうすぐ時計を飲み込んだワニの野郎がやって来て、聞きたくもないことを告げに来る。お互いネバーランドで暮らすには手足が伸び過ぎた。----大人になる時間だ、ってな」 (2010.03.01) 「人生は、慢性疾患だ。悪いことに性行為で次の世代に感染する」 (2010.02.15) 「無くしたくないものが、あるなら走れ。手が届くと、信じて走れ。それもできないなら、人なんか好きになるな!」 (2010.01.30) 「君は周囲の人間を幸せにする。だから気付かないんだろう。お嬢さん、世の中には幸せでない人間も大勢いる」 (2010.01.10) 「孤独を感じるのは、心に血が通った証拠だ。魂が呼吸を始めたんだ」 (2009.12.01) 「やかましい。どっかの耳の長い男なら「negative」というところだぞ」 (2009.11.15) 「雪崩の責任を感じる、雪片などいない」 (2009.11.03) 「夢は逃げない。逃げるのはいつも自分自身だ」 (2009.10.30) 「成り行きまかせの生き方は、気楽なようだが、憂鬱に行き着きやすい。楽観主義は意思の上に、悲観主義は感情の上に、育つからだ」 (2009.10.20) 「電灯の下で正しいものが、太陽の下で正しいとは限らん」 (2009.10.15) 「キョンだと思って殴るからな、多分、傷の治りは遅いぞ」 (2009.10.1) 「悪いことするなら、俺も混ぜろ」 (2009.9.15) 「間違えたと気付いたら、ごめんなさいと言えばいい。それだけだ」 (2009.9.2) 「もっとも見こみのない愚か者は、自分が賢いことを知らない者だ」 (2009.08.25) 「才能ってのはな、不断の努力を怠らずいつまでもやり続ける退屈さに、耐える力を言うんだ」 (2009.08.18) 「火をかしてくれ。タバコを吸おうと思ってな。ああ、普段はやらない。だが、この歳になると、さまになる沈黙の仕方は少なくなる。それに、これ以外に、知人を弔うやり方を知らないんだ」 (2009.08.15) 「迷惑? ガキにできることで迷惑でもなけりゃ心配もかけない、なんてものがあるのか? 迷惑と心配をかけられるのは大人の特権だ。俺は誰にも譲る気はないぞ」 (2009.08.12) 「若造は格好悪くたっていいんだ。世の中には、無様な格好でしかできないことがたくさんある。だが、オヤジはそうはいかん。何が格好良いことで何がそうでないか、若造に見せることから逃げて、どこにオヤジの生きる場所がある?」 (2009.08.08) 「おれか? バカ親父だ。今のコトバで言うと、ペアレント・モンスターだ。ああ、逆じゃない。その証拠に、いま狼男に飯をつくらせてる」 (2009.08.03) 「あんたらがいう『人間ども』は、そりゃひどい過ちを繰り返してきた。だがな、あいつらはその『過ち』から生まれてきた訳じゃない」 (2009.07.28) 「人は殺し合うためにすら、群れを作る。そして、よりでかい群れをつくる方が勝ち残ってきた。そういう生き物だ」 (2009.07.21) 「苦痛は生物が最初に獲得した感覚だぞ。手放せるとでも思ったか」 (2009.07.19) 「いつでも、我を失ってもなお、頬に当たる風に、気付くことができるように」 (2009.07.15) 「何にせよ愛を注ぐことができるものに、時間を費やすべきだ」 (2009.07.12) 「キスでもして欲しいか、眠り姫。色気づくな。ガキには100年早い」 (2009.07.05) 「人間関係で、しかも昔のそれで「仕事」するようになったら、お終いだぞ。何のアイデアもワクワクもない。殴りあった果てにできる友情も、キズ舐めあいながら飲む酒の楽しみも、だ」 (2009.07.03) 「人の酒を飲むなとは言わんが、徳利をラッパ飲みするな。せめて猪口を使え。下品というより、面白いぞ」 (2009.06.28) 「驕るなよ、バカ娘。世界なんてものはな、エゴの一塊さえあれば、自ずとできちまうんだ」 (2009.06.26) 「……君、あの月を彼女にプレゼントしたいんだが」 (2009.06.20) 「強くなりたい? そりゃまた、あまりに少年マンガ的な決意だな、カカロット」 (2009.06.19) 「仕事なんて大きく分ければ2つしかないぞ。つまらない仕事か、儲からない仕事だ」 (2009.06.18) 「なおルー・リードとエリック・ホッファーには、オヤジ加点が着く。必読」 (2009.06.15) 「墓には今行って来た。これは死者のための花じゃない」 (2009.06.13) 「いいから、行け。映画なら、ここで俺にピン・ライトが当たってエンディングだ」 (2009.06.12) 「要するに、ハリウッド映画みたいなことを言えばいいんだろ?」 (2009.06.10) 「しょうがねえな。好きって奴だけは、どうしようもない」 (2009.06.08) 「自分に何が向いてるか、なんてところから出発すると、就活も人生も失敗するぞ。なんとなれば、そんなものはやってみんとわからんし、やりはじめたら向いていようがいまいが、やり切るしかないからだ」 (2009.06.07) 「飛べないと分かった日からずっと、俺は立って歩いてる。この二本の足でな」 (2009.06.04) (ロケットは夢やロマンを吐きだしながら飛ぶというのかね?)「俺たちが石斧で殴りあってた時代にはロケットなんてなかった。誰かがどこかの段階で、それを夢見なかったら、かち割る頭がなくなっても、まだロケットは飛んじゃいないぞ」 (2009.06.03) 「絶望は愚か者の結論だ? 愚か者に結論なんか出せるもんか。絶望したことのない者が愚か者になぞなれるもんか」 (2009.06.02) 「ヘタクソな画家には二つのタイプがある。モデルなんか見ていない奴と、モデルと必ず寝る奴だ。しかし、その両方を兼ね備えたドヘタもいる」 (2009.06.01) 「酒は、はじめてか? じゃあ、注げ。そして飲め」 (2009.05.31) 「好きな女のために、腕一本捨てられるか、意に添わない人生をまるごと引き受けられるか。俺に問われていたのは、そういうことなんだろう」 (2009.05.29) 「だったら泣け。それぐらいの時間なら稼いでやる」 (2009.05.27) 「相思相愛の二人が結ばれれば、それで《物語》はおしまいだ。だが《現実》は、そこから始まるんだ」 (2009.05.26) 「人は変わるぞ。それも否応なしに、確実に、だ。」 (2009.05.25) 「愛は約束じゃないぞ。今、手を伸ばさんと届かなくなる。それでいいのか?」 (2009.05.24) 「悪い知らせがふたつある。涙が出るほど悪い知らせと、涙も涸れるほど悪い知らせだ。どっちから聞く?」 (2009.05.23) 「悪いがシリアスをやれるキャラじゃないんだ。好きにやらせてもらうぞ」 (2009.05.22) 「どうやら、ここからは活劇だ。口を閉じてろ。おしゃべりなら後で聞いてやる」 (2009.05.21) 「誰もが特別扱いされたがる。だから飛行機にはエコノミークラスとビジネスクラスがある。行き先も、死ぬ危険も、値段ほどには変わらないのにな」 (2009.05.20) 「若い頃は、何かを好きになるより、何かを嫌いになるのに忙しい。でないと、自分と世界の境目だって、分からなくなるからな。今は、好きなものを愛することで忙しい。限りある時間しか残っていない、と思い知っているからな」 (2009.05.19) 「だじゃれは親父の基本スキルだ。親父リテラシーだ。コンピュータが使えても、洋楽を口笛で吹けても、とっさのときに駄洒落がいえないようじゃ、デイブ・スペクターにも劣る。おれはどっちもできるけどな」 (2009.05.18) 「これ以上の言葉も、これ以外の言葉も思いつけなかった。陳腐な言葉だが、陳腐な言葉でないと伝えられないこともあるんだ。----君を愛してる」 (2009.05.16) 「ここはどっちだ?天国か?それとも地獄か? ちょっとキスしてみてくれ」 (2009.05.15) 「確かに正しいことばかりしてきた訳じゃない。だが時には怒ってもいいはずだ。せめて、おまえさんが二度と笑えなくなる程度には」 (2009.05.14) 「隣の星に聞こえるように、宇宙速度で叫んでやる!」 (2009.05.13) 「学校では、リベラル・アーツとマーシャル・アーツを学んだ。どっちが見たい?」 (2009.05.11) 「俺が使うのは「オヤジ・キック」と「オヤジ・パンチ」、あとは悪知恵だけだ」 (2009.05.10) 「力のない者は力のない者らしく、志なかばで力尽きるもんだ。いま、おまえさんは、最初からあきらめてる」 (2009.05.07) 「親父を甘く見るなよ。ガキが育っただけなんだからな」 (2009.05.06) 「エンターテイメントの基本は、予想を裏切りつつ期待は裏切らないことだ。ヒーローは勝つに決まってる。誰もがそう思ってる。誰もがどう考えても勝てそうにない場面から逆転してはじめて、ヒーローと言えるんだ」 (2009.05.05) 「いつ、どこで、どんな目に遭うか、決めるのは俺たちじゃない。強いていえば、神様だ。俺たちが決めることができるのは、その時、何をやるかだ」 (2009.05.04) 「見てくれ。このちっちゃいのは生命(いのち)だ。そして、おれはこいつの父親だ」 (2009.05.03) 「人工衛星は落ちていく。地平線に向かってな。永遠にだ」 (2009.05.02) 「壁なんてな、手が着くところまでくれば越えたも同然だ。そのときゃ想いは先に、向こう側に行っちまってるだろ。それに追いつけばいい」 (2009.05.01) 「必要なものが、好物とは限らんぞ」 (2009.04.30) 「方法なんてな、二本の足で行けるところまで行く、というので十分だ」 (2009.04.29) 「眺めている間は、世界の端ばしまでが見渡せるように思える。何もかもわかったような気になれる。だが一歩前に出て相手に触れたら最後、一瞬にして全てを見失う。音は耳鳴りのように自分の内側だけから聞こえる。手はしびれ、感触らしきものも確かでない。そして目に見えるのはもう、そいつだけだ。だが、世界は色を、においを、温度を、ざわめきを、鼓動を取り戻す。それが恋だ」 (2009.04.28) 「相談があるんだ。……さぼろう」 (2009.04.27) 「なにかつらいことがあったら、そのうしろに『プレイ』とつけてみろ。残業→残業プレイ。徹夜→徹夜プレイ。どうだ、なんだか楽しくなるだろ?」 (2009.04.26) 「偶然っていう寄り代がないと運命なんてものは降りてこられないのさ。運命的な出会いはあっても、運命的な幾何学はあり得ない。必然的な関係には、運命のつけ込む隙がない。三角形の内角の和が二直角(180°)に等しいのは、運命のしわざじゃない」 (2009.04.24) 「神様の声なんて聞こえなくてもな、歌は歌える。今度はやつらに聞かせてやりな」 (2009.04.23) 「どんなに取り澄ましていても、大人って奴は、そこそこの奴も取るに足らない奴も、みなヤクザのようにプライドが高い。ぞんざいに扱われたら自分の存在に我慢ならなくなって、すぐ頭に湯が沸いちまう。だからヤクザのように扱ってやった方がいいのさ」 (2009.04.22) 「退屈ならば、お嬢さん、恋をすることだ。そうすれば世界は謎だらけになる。……半年間、娘を観察して発見した知見だ」 (2009.04.21) 「おれとおまえはどちらもツンデレだが、おまえが恥ずかしくて言えないところを、おれはもっと恥ずかしいことを言ってしのぐ。勝負あったな」 (2009.4.20) 「ふん。泣いたか、バカ娘。……ちっとは、ましな顔になったぞ」 (2009.04.19) 「知恵の実食ったところでな、人が覚えたのはパンツを履くことだけだ」 (2009.04.18)
https://w.atwiki.jp/haruhioyaji/pages/321.html
親父とRPG その2から ひゅーーどかん! 「誰!? 今、モンスターに、ロケット・ランチャーぶっ放した奴!?」 「おれだ、遅くなったな」 「親父さん!」 「首のつながったキョンと、そこにぶら下がってるバカ娘が見えるぞ。どうやら間に合ったらしいな」 「こっちは、足でリセットボタンを押したい気分よ!」 「ハルヒ、考えても見ろ、この人を敵に回すのと、味方の後ろでヤジらせるのと、どっちが心臓に悪い?」 「地獄の最下層コキュートス(嘆きの川)で氷漬けにするか、アトラスに代わってジブラルタル海峡のところで天空を担がせ支えさせるか、って選択肢はないの?」 「なんだかんだ言って愛されてるな、キョン」 「いや、親父さんが単にものすごく嫌われてるという話じゃないかと」 「敵にこれだけ囲まれても、その余裕、さすがはハルキョンだ」 「え、なんだ!? 中盤の山場とは言え、あのモンスターたちは? 妙にギミックというか、カラクリっぽいというか? 足があるのにキャタピラの上に乗ってる奴がいるし、どう考えても自分の内蔵が切れるだろうっていうチェーン・ソーみたいなのが腹部についてる奴までいるし、あっちの奴はどうみてもロボット風で車を食ってますよ!」 「どうやら向こうにも(円谷英二の志を継ぐ)マッド・サイエンティストがいるらしいな」 「向こうにも? ってことは、こっちにも?」 「あんたは単なる特撮ヲタ親父よ」 「ははは。違いない」 「いや、笑ってる場合ですか?」 「キョン、アメリカの作家カート・ヴォネガットがこう言っている。『卒業生の皆さんに覚えておいてもらいたいことはひとつです。歴史上、戦車に勝てた人間はただひとり、ジョン・ウェインしかいません。しかもジョン・ウェインは別の戦車に乗っていました』」 「深いのか何なのか、よくわかりません。結論、けっこう絶望的だし!」 「この歳でファンタジーは少々きつくてな。踊りながら魔法陣を描くより、引き金を引く方が気が楽だ」 「いや、そのネタも今時のよい子はわからないと思います」 「なにしろ登場人物にラカンとかガタリとか付けるマンガ家だからな。『現代思想』って雑誌があったのを知ってるか?」 「話を戻しなさーい!! 重火器なんか持ち込んで、ゲーム・バランスとか世界観とか、むちゃくちゃになるでしょ!」 「心配するな、恐竜○車なんて、油くさくて食えたもんじゃないし、クレ○ジーゴンは食える部分がない」 「そっちの心配は誰もしてないわよ!」 「あと、オチならこっちで用意してるから安心しろ。地口オチだ」 「駄洒落で逃げるなんて最低よ!」 「前にも言ったが、駄洒落はオヤジの基本スキルだ、オヤジ・リテラシーだ」 「どういってこの場をごまかすつもりよ!?」 「このロケットランチャーはRPG-7という。知らん? 『こち亀』にも『魔人探偵脳噛ネウロ』にも出て来たぞ」 「サンプリングが偏ってる! どっちも少年ジャンプじゃないの!?」 「ビデオゲームの世界じゃ、もっとおなじみだ。ウィキペディアの『RPG-7が登場する作品の一覧』を見ろ」 「オチを中途半端に小出しにしてしまった上に、モンスターが向かって来ます」 「ああ、しまった。安いと思ったら、こいつは中国製だぞ、キョン」 「実は段ボール紙で作ったとか、今時、ネウヨ・ネタはスルーですよ」 「いや、中国製コピーは『69式』っていうんだ」 「シックス・ナイン!」 「キョン、あんた、ちょっとこっちへ来なさい」 「うわー、親父さん、後は頼みます」 「大人の意味で『オレたちの戦いはこれからだ!』オチだな」 その4?へ